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米国発の金融不安に端を発した世界同時不況の進行は、日本の経済にも大きな打撃を与え、厳しい状況に落ち込んでいる。当初は、日本の実体経済の安定性から日本経済にとって影響は軽微と見られてきたが、2008年後半から世界的規模での経済の悪化や急速な円高の進行にともない、自動車、家電、機械工業など実物経済への影響が深刻化し、日本経済全体にわたって大きな衝撃を受けている。急激な経済状況の悪化の結果、消費活動は急速に冷え込み、流通・サービス産業も厳しい経営環境に追い込まれている。売上高の大幅な低下にともない、急速に収益性は悪化している。
2008年度の流通企業の業績見通しについては、12月の業績も確定していないことから、一部の企業の決算情報に関する報道に基づき推計すると、特定の企業を除くと大幅な減益あるいは欠損に陥る企業が増加するものと予想される。米国の12月の小売売上高は前年同期比9.8 %のマイナスとなり、年間最大の売上高が期待されるクリスマスセールの不振を裏付けており、米国の小売・サービス業も不振にあえいでいる。
日本の流通企業は、90年代の規制緩和及び「大店立地法」への転換のもと大型店の出店が増加し、過剰店舗・過剰競合状況に直面することとなった。「大店法」の規制緩和が始まった90年から大型店の出店は大幅に増加し、89年の794店から一気に1,667店「(第一種(3000m2超)881店、第二種(500m2以上3000m2未満)786店」増加。さらに、最大時の96年には2,267 店まで増加し、99年まで年間1,000 店台の新規出店があった。そして、2000年の「大店立地法」への転換期には様子見からか一気に減少した。
景気の回復への期待と規制緩和を受けて、超大型店を中心とした店舗の大規模化、長時間営業店舗が大幅に増加した。「大店立地法」の新設件数の推移を見ると、2000年には大店立地法の運用動向を見守る形で193店舗に留まっていたが、2001年には450店と回復傾向を示し、2002年には638店、そして、2003年以降は700店台に到達し、2003年の786店、2004年には738店、2007年は751店と700店台の出店を継続した。この過剰供給の継続による厳しい競合に伴い、中小小売店のみならず、大型店も不振を極めており、過剰競合のもとで厳しい経営を強いられていた。2006年に「まちづくり3法」の見直しが行われ、中でも「改正都市計画法」の施行により、大規模開発が商業地域や近隣商業(一部の地域準工業地域)以外は規制されることになり、流通業の適切な業態革新や世代の交代が困難になった。ここに、突風のように襲い掛かってきた景気の悪化と、雇用不安等の深刻化にともなう消費活動の冷却化は流通業界に深刻な打撃を与えている。
わが国の流通業界は「大店法」、「大店立地法」、「改正都市計画法」などの規制強化や規制緩和に過剰に反応し、規制前には駆け込み出店など企業の経営資源を上回る過剰投資を行い、また、規制が強化されると一気に投資を縮小するなど、流通業界全体に影響を与えるばかりでなく企業自体の経営にも大きな影響をもたらしている。ビジネスチャンスに積極的に対応することは重要であるが、現在までの経緯を見ると、多くの大規模流通企業が経営悪化や倒産に追い込まれるなど、経営に深刻な打撃を与えるケースが多い。中・長期的視点や産業界全体のビジョンを視野に入れた企業活動が求められていると言えよう。
2007年11月末「改正都市計画法」が施行されたことにより、「大店立地法」に基づく大型店の新設届け出件数は、2008年度は11月末時点で430店に留まっており、前年の同期間の497店舗と比較すると14ポイントマイナスとなった。特に注目されるのは1万m2以上の大規模店舗の届出件数は大幅に減少し、同じく2008年は11月末の時点で19店舗の届出件数に留まり、2007年における同期間の64店舗と比較して3分の1以下に減少している。2009年以降、1万m2以上の大規模店舗の出店は大幅に減少することになり、改正都市計画法の規制の影響がはっきり出ている。現在のような急速な景気の減速期には大規模開発の適切なブレーキ役を果たしたと見ることもできるが、一方では、地域経済の活性化を期待する地方自治体等の開発事業の抑制に繋がるなど課題も少なくない。
2008年の大店立地法の届出概要から見ると、食品スーパーの開発が増加しており、食品スーパーを核店舗とした3,000m2から8,000m2規模のSCの増加が予想される。また、ドラッグストア、家電量販店、衣料専門店等の大型店の出店は継続している。一方、総合スーパー(8店)及び総合スーパーを核店舗としたSCは7SCと大幅に減少している。
急速な経済環境の悪化による需要総体の収縮は、更なる経済活動の減速をもたらし、結果として、個人所得の減少と消費支出の圧縮という悪循環に陥る。適切な消費を維持する積極的な国家や主要経済主体の施策が不可欠となろう。GNPの6割近い民間最終消費支出の減少、特に個人消費支出の減少は、日本経済全体に大きな打撃を与え、マイナスのスパイラルに歯止めが掛からなくなる。日本の消費者は成熟段階にあり、耐久消費財もファッション衣料も住宅も高い保有率を維持しており、モノ余り現象が幅広く発生している。この段階での景況の悪化は、個人消費の収縮に拍車をかけることになる。
したがって、動意を見せない消費活動を刺激するため、激安、価格破壊といった価格訴求を繰り返すことによって需要の喚起を目指すケースが増加している。ただし、モノ余り状況の下における不況への対応として、過剰な安売りなどのいたずらな価格訴求は短期的に歓迎されても、結果として市場の収縮をもたらし、長期的業績の安定や収益性の確保には繋がらない。
流通・サービス業界は非常に困難な課題ではあるが、過剰な価格競争に依拠しない、多様な付加価値の提供による健全な消費拡大を目指した真摯な取組みが求められている。不況期における流通・サービス業の施策が低価格訴求だけでは需要の本格的回復や企業業績の回復に繋がらない。健全な消費を創出する新しい価値の提供、付加価値の高い提案を継続することが不可欠となろう。
厳しい不況を克服するためには、柔軟な価格戦略を展開するとともに、ショッピングや飲食などの消費活動の「楽しさ」や「豊かさ」、「賑わい」を実感できる商品開発、環境作りや優れたサービスの提供が重要となる。流通業のみならず、全ての産業分野で需要を喚起し、新しい需要を創造するイノベーションが求められている。
過剰競合化における急速な景況の悪化は、安定的に成長を遂げてきたSC業界に対しても少なからぬ影響を与えることになろう。06年から08年までに完成度の高い、注目度の高いSCが次々と開発され、本格的SCの時代の到来として多様な分野から注目を集めてきた。一方、都市の疲弊や中心市街地の衰退の加速化への対応として、2006年に「まちづくり3法」が改正され、中でも「改正都市計画法」に基づき2007年11月末以降、延床面積1万m2以上の「大規模集客施設」の開発が大幅に規制されることになった。07年、08年にはSC開発数の増加やSC規模の拡大が若干見られ、これを、駆け込み出店とか、SCバブルとの指摘や、同質化や厳しい競合に苦しむSCに対してSCバブルの崩壊と表現する向きもある。SCは総合スーパーや百貨店を核店舗としているところが50%近くを占めており、核店舗の不振から業績が悪化するSCや閉鎖を余儀なくされたSCも発生していることは事実であるが、SC業界全体を俯瞰してみると、SC総体の進化は著しく、完成度の高いSCが増加し地域経済の活性化への寄与や、地域消費者の生活の質的向上などに大きな役割を果たしている。また、既存SCも積極的リニューアルを実施し、地域消費者に新たな価値を提供することで活力を維持している。
SC産業全体としては経営システムの高度化や開発ノウハウ向上などイノベーションを継続することでSC大国である米国のSC産業にも比肩するSCの開発が可能となった。未曽有の経済危機にあっても、付加価値の高い流通・サービスの集積、質の高い環境形成や地域社会の安心安全の実現、優れた雇用機会の創出、地域環境に負荷を与えない環境重視型のSCの開発を推進し、地域社会に貢献するSCとして進化することが求められている。
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